あまりにも多い、
魔法使いたち

Youtubeでドリップのやり方を調べてみると、無数に、星の数ほど出てこないでしょうか。これはしてはいけない、あれをした方が良い、どこにも正解はないが、みな楽しそう。そこには個性があり、生活があり、自分らしさがある。

好きにはなれない仕事。しかし役割を求められて、家を出る前に、一枚の仮面をかぶらせられる、私たちが作り上げてきた社会の中で、ふとそんな息苦しさを感じないでしょうか。

そんな毎日をリセットするひととき、私たちは太古からの動物のように、まるでオオカミが舞うみたいに、大地に自分だけの円を描く、そんなおまじないをするでしょう。

お気に入りのドリッパーを取り出し、器に置く、豆を挽き、お湯が沸くのを待とう。コーヒー豆は焙煎して間もない、フレッシュなものがいい。香りととともにそれはマフィンのように大きく膨れ上がる。

コーヒーマジックの始まり。
そこに円を描くうち、私たちは自らをひととき呼び覚ます。私たちひとりひとりは、特別な香りを作る、魔法使いのひとりだと。

ドリップしよう。
今すぐ、自由に、軽やかに。
世界が整う、わたしだけのひととき。